「ミイラ大好き!」、「ミイラかわいい!」という信じがたい声を、高御座を見に行った時、耳にしました。
これは実際に見て確認するほかないと、覚悟を決めて見に行くと、意外なことにビックリするくらい感動したのです!
ミイラ自体はもちろん、ミイラを取り巻く多くの物語は、驚きの連続だったのです。
そこで今回は、「ミイラ展」のレポートをお届けしたおと思いますので、長くなりますが、ぜひご覧ください。
ミイラへの道
東京上野の国立科学博物館で開催中の『特別展 ミイラ 「永遠の命」を求めて』を見に行きました。
1月2日㈭は絶好のお出かけ日和。
うちの奥さんがどうしてもというので、上野の科博で「ミイラ展」を見ることになってしまいました。
内心は、「なんで正月から気色の悪いもん見なあかんねん!」と思いつつも、奥さんのたっての希望とあっては断れません。
正月は行くところが無いせいか、上野の山はかなりの混雑です。
みんな動物園かと思いきや、西洋美術館、東京国立博物館、そしてなんと科博へ同じくらいの人が向かっていきます!
驚きのうちに科博到着午前9時40分。
チケット購入に10分、さらに入場に20分待つと掲示されていましたが、迷うことなく並び、待つこと30分強でようやく入場できました。
会場はものすごい人!特にミイラの前には黒山の人だかりです。
南アメリカのミイラ
まずは南アメリカのミイラ。最初の少女のミイラはレプリカですが、十分な迫力です。
指の爪まできれいに残っていて、鳥肌ものです。次はナスカの女性ミイラ、なぜか両手に乳歯を握っているそうです。
この乳歯、自分の?子供の?と観客の会話が弾みます。
副葬品に謎の木の実とかがある中に、カタツムリ!なんで?です。
「砂漠だから貴重なのかなー」とは見知らぬ男の子の意見、確かに説得力があります。
人混みをかき分けるように進むと、頭に大きな傷のある子どものミイラ、詳しいことが分からなくなってしまった女性と子供のミイラと、ミイラ、ミイラ、ミイラです、そりゃそうだ、なんですが・・・。
チャチャポヤのミイラ包みは、子供のミイラをすっぽり布で包んで、刺繍で顔を入れています。
コロッとした包みにかわいらしい顔があって、愛らしい雰囲気、展覧会のマスコットにもなっていますが・・・ちょっと待って、やっぱりミイラやん!
この子供たち、村を守るために生贄となったそうです。
ミイラになっても湖越しに村を見守っていたとのこと、胸に重く響きます。
ゆっくり見たかったのですが、やっぱり人が多くて、頭越しにしか見れんかった、残念!!
古代エジプトのミイラ
古代エジプトのミイラ、こちらはミイラの本場、エジプトと言えばミイラ、ミイラと言えばエジプトと思っていました。
ミイラを作るには高度な技が必要、技術者は人体を熟知しているとありました。
「たくさんの遺体を解剖しているからだね」と見知らぬお父さんが子供に教えていました。
意外だったのは、これだけ苦労をしても、ミイラ作りが失敗して白骨化するのが大半という事実でした。
ミイラとミイラ作りの解説ビデオは混み混みですが、「ペンジュの棺」は空いていたのでゆっくり見ます。
これ、2800年前に描いたってうそでしょ、というくらい鮮やかです。
この棺、エジプトでも最も美しく残ったもの、でも高級品というわけではないようです。
ペンジュさんは神官、なのに蓋に描かれた宗教画の内容が間違っているとのことで観客から失笑が。
若い男性のミイラと棺が並べてあるのですが、ミイラより棺がかなり古いって!棺を使いまわしするのにびっくりです。
古代エジプトも厳しい社会だったようです。
人気のネコミイラ、ぴんと立った耳がかわいい!でもミイラ。
ちなみに胴部分にミイラが入っていて、顔や耳は包帯で作ったものとのこと。
ほかにも生き物のミイラが並んでいて、ペットや食料だったそうです。
ネコ、ハヤブサ、トキ、えっトキ? さらにワニって!ワニは写真ですが、ペットにしろ食料にしろ どうなってるのって感じです。
そうか、エジプトって死後にものすごいお金とエネルギーをかけてたんだと今更ながらビックリです。
すごく豊かだったんですね。
そして こんなにこだわっていたからこそ、ローマ帝国が禁止してもミイラ作りがしばらく続いたんだ、と納得。
そしてサラッと展示に書いてあったんですが、昔はヨーロッパ人がエジプトのお土産にミイラ買って帰ってたそうです!
そんなお土産もらったら腰抜かしそうです。
ヨーロッパのミイラ
そのヨーロッパのミイラです。オランダの皮だけミイラ、展覧会のポスターにもなっています。
オッサン二人が並んで埋められていたそうで、観客からいろんな憶測が飛んでいました。
オッサンのあご鬚が残ってる!ぞわっとします。
古代ヨーロッパでは、罪人とかが暴力を受けたり処刑された後に、ポツンと湿地に埋められてミイラになった例が多いそうです。
「イデガール」という少女のミイラは絞殺されて埋められていました。
彼女にいったい何があったのでしょうか? 胸が締め付けられます。
死んでなお罰を受けるとは、古代ヨーロッパ恐るべし、です。
オセアニアのミイラ
オセアニアのミイラです。
「肖像頭蓋骨」と言って、一度埋葬した遺体の頭部に粘土とかで復顔したものだそうです。
ものすごく大切にされていたのが伝わってくるようで、胸がほっこりしてきました。
この分野の調査研究は小林眞という在野の研究者が先駆けとのこと、サラリーマンしてて休日はパプアの奥地で調査って、タフ過ぎです。
パプアニューギニアのアンガ族が遺体を燻してミイラを作る映像もありました。
実際にミイラを作っている映像は なかなか衝撃的です。
日本のミイラ
ラストは日本のミイラ。
偶然ミイラになった江戸時代の兄弟、本人たちもびっくりですね。
自分でミイラになった本草学者。
生前、乾燥剤の研究をしていたそうで、自分の研究成果が実証されて、これぞ研究者の本会、きっとあの世で本人も大満足ですね。
そして即身成仏 弘智法印 宥貞さんです。
立派な厨子に安置されたそのお姿からは、不思議と恐ろしさや気持ち悪さはありません。
やさしさに包まれるような感じに思わず合掌です。
終わったーっと思ったらまだありました。
かつて科博で展示されていたミイラたちです。
関東大震災のどさくさで盗まれた?あと、日本中で見世物になってたそうです。
いよいよ持っていられなくなると、興行師が即身仏としてお寺に押し付けたのだとか。
ヘンなもの持ってて困るとお寺に持ち込むのってあるある、なんですね。
ミイラとは?
科博のミイラ展、「ミイラは文化人類学的、病理学的、法医学的に重要な資料」とあります。
「生きる」という意味を考えさせてくれる、とも言っています。
それはそうなんだけど、やっぱり恐ろしくもあります(特にヨーロッパ)。
自分たちを見守ってくれる、アンガ族のミイラとか宥貞様は、その尊さに心がほっこりするのは意外でした。
しかし、何といっても一番驚いたのは観客です!
みんなガラスに張り付いてミイラを凝視することしばし、もうまったくのガン見です。
「どんなけミイラが好きやねん!」
自分のことを棚に上げつつ、物見高い人の多さに何より驚いたのでした。
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