中華料理 十八番  懐かしい東京の町中華

かつて東京には町ごとに中華料理屋があり、その町自慢の味が守られていました。

そんな町の中華料理店もずいぶん少なくなってしまいましたが、柳橋ではその灯が今でも大切に守られているのです。

そこで今回は、「中華料理 十八番」(東京都台東区柳橋2-9-5)をご紹介します。

中華料理 十八番の外観の画像。
【中華料理 十八番】

新型コロナ禍の午後、我が家の女性陣が「中華料理を食べたい!」と言い出しました。

普段は中華料理を食べない彼女たちも、町の重苦しい雰囲気に気圧されてちょっと違ったおいしいものを食べたくなったようです。

私は歳のせいか、中華料理に胃もたれしてしまうので気が進まないでいました。

そういえば、昔ながらの町中華だとおいしく頂けそうだと思い直して「中華料理 十八番」さんでの外食を提案すると、テイクアウトしてみることにしたのです。

「中華料理 十八番」さんは柳橋2丁目の路地の奥にあります。

柳橋町会の方々から高い評価をお聞きしていたものの、お店に入ったことはありません。

買い物ついでの午前11時、開店準備でお忙しいところ、注文におじゃましました。

入り口の戸を開けると、お店のご主人 八代さんがにこやかに迎えてくれます。

さっぱりした店内はカウンター席のみで椅子席が12席ほど、こじんまりした店内は清潔感があふれる爽やかな空間でした。

さて、女性陣ご所望は「中華料理らしいおかず」でしたので、メニューからレバニラ炒め【650円】、麻婆豆腐【700円】と餃子【450円】二人前をオーダーしました。

今回はテイクアウトをお願いしたのですが、もちろん店内でもいただけます。

夕刻に注文した料理を取りに伺うと、片手に持てるようにまとめてくださっていました。

家でお皿に遷して並べると、食卓はいつもとは違った華やかな雰囲気です。我が家の女性陣は大興奮です。

「いただきます」とともに歓喜の声が上がって、笑顔はじけるにぎやかな食事になりました。

十八番さんのご主人・八代さんは、若いころからおじさんの経営する浅草寿町の名店・十八番で修業され、柳橋の地にのれん分けしてお店を構えたのが1992年。

以来、近隣住民やビジネスマンの方々に愛される隠れ家的な名店として知られ、『散歩の達人』でも看板メニューのニラそばが紹介されました。

長く浅草で愛された伝統の味は、穏やかで味わい深く、どこか懐かしさを感じさせてくれます。

いつもはだらだら食べる下の娘も、奪い合うよに頬張って わずか10分ほどで完食しました。

大好評で「今度は何がいい?」とメニューの写真を見ながら歓談です。

「次はかに玉丼!」「やきそばもいいね」と会話が大いに弾んだので、次の日さっそく注文におじゃましました。

娘たちの様子を話すと喜んでくださったご主人は、腕によりをかけてかに玉丼【750円】と五目焼きそば【750円】を二つずつ用意してくれました。

今回は岡持ちをお借りしてのテイクアウト、帰りに「なに、出前はじめたの?」などと町の人に冷やかされながらの出前初体験!

かに玉丼、五目焼きそばともに大好評、「明日も食べたい!」となって三日連続、今回は肉野菜炒め【600円】、レバニラ炒め【650円】、肉ニラ炒め【750円】をテイクアウトしました。

どの料理も塩味ベースのさっぱりした味つけで、素材の味が生きる絶品!

下の娘のお気に入りはかに玉丼、甘酢あんとシンプルに塩で仕上げたかに玉の風味がたまりません。

お姉ちゃんのイチ押しは肉ニラ炒め、ニラの香りとさっぱりした味は、ごはんととてもよく合います。

奥さんのお気に入りは餃子、集めの皮にふわふわの野菜中心のあんの組み合わせは衝撃的です。

私のイチ押しはレバニラ炒め。

バカボンのパパではないですが、町中華といえはこれ、という定番メニュー、期待を裏切らないニラの香りと食感が食欲をそそる逸品でした。

また、麻婆豆腐は見た目と違ってさっぱりしていた口当たりの後に程よい辛さがピリリと口に広がる一皿です。

肉野菜炒めは飽きの来ないシンプルな味わい、また食べたくなるどこか懐かしい味でした。

私は 中華料理 十八番さんを見るたびに思うことがあります。

花柳界のあった柳橋、ものづくりと商業の町浅草橋、下町の鳥越と、大衆文化の栄えた高度経済成長期には、町ごとに中華料理屋がありました。

洋食屋とともに、家族そろっての外食に行く、みんなの生活に欠かせないお店でした。

かつて町会の年末警戒中の雑談で、ラーメンの話になったことがあります。

それぞれの町に地元民の愛してやまない中華料理屋があり、それぞれのお店独自の味が出来上がっていました。

みなさんが言うには、長年慣れ親しんだ自分たちの町のラーメンの味が忘れられないのだそうです。

廃業した中華料理屋を思い出して涙ぐむ人などもおられて、ラーメンの味が舌の記憶となって自分たちの人生の一部となっているのだ、と深く感じ入ったところです。

このような中華料理屋さんは、近年では町中華として再評価する動きがようやく出てきました。

しかし、近年は町の様子もすっかり変わり、町の中華料理屋で残っているのは中華楼さんや大勝軒さん、みなと亭さんなど数えるほどになっています。

十八番さんがあるのはかつて花柳界が栄えた柳橋の町。

すっかりマンションとオフィスビルばかりになってしまった柳橋の町ですが、下町らしいあたたかな雰囲気が残るすばらしい町、この地域住民の憩いの場が、十八番さんなのです。

中華料理 十八番の外観の画像
【中華料理 十八番】

中華料理 十八番 店舗情報

所在地:東京都台東区柳橋2-9-5  

アクセス:JR中央総武線 浅草橋駅東口から東北に約250m。(徒歩約7分)

営業時間:11時30分~16時、17時30分~21時(土曜日:11時30分~14時)

定休日:日曜日・祝日

【文中ならびに写真のメニューと料金は、2020年2月時点のものです】

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