伝統の技に挑む -八重畳編- 金井畳店 その4

自分の限界に挑むのはなぜ?

「自分の限界に挑む、そして自分の能力を伸ばす」わかっているけど、なかなかできないですよね!

さらに苦労して得た技術なのに「一生に一度使うかどうか」となると、私には出来そうにもありません。

ところが、我が町の畳の匠・金井功さんは、こうした努力を怠らないのです!

地域の隠れた名店をご紹介する鳥蔵柳浅、そこで今回は金井畳店(東京都台東区浅草橋2‐13‐9)〔http://www.tatamiya-kanai.com/〕(https://www.facebook.com/tatamiya-kanai/) の金井功さんの取り組みをご紹介します。

【目次】その1:日本文化と畳 / その2:畳のすばらしさとは? / その3:伝統の技に挑む / その4:伝統の技-八重畳編― / その5:伝統の技を伝えるのはなぜ? / その6:日本の伝統を明日につなぐ

出来上がったばかりの八重畳の画像
【出来上がったばかりの八重畳】

日本文化に欠かせない畳

日本で誕生した畳は、千年の時間をかけてTPOに合わせた様々な畳を生み出してきました。

なかでも、様々な儀式や儀礼で使用する特別な畳は、有職畳(ゆうそく だたみ)と呼ばれて大切に守られてきたのです。

そしてこの有職畳が、日本文化の基調である「有職故実(ゆうそくこじつ)」【公家・武家の礼法。日本の礼儀作法の規範】の欠かすことができない重要なパーツとなっています。

金井さんの挑戦

明治44年(1911)創業の金井畳店四代目の金井功さんは、さらなる技術向上と日本文化の継承を目指して様々な有職畳に挑んでおられます。 

その中から、今回は「八重畳(やえだたみ)」についてお届けしましょう。

八重畳に使う繧繝縁の画像。

八重畳とはどんなもの?

八重畳は神様がご座するための特別な畳で、技術的にも価値的にも最高峰の畳です。 

古事記に「海神、是に八重席薦(ヤヘタタミ)を鋪敷(し)きて、延(ゐ)て内(い)る」〈神代紀・下〉とあるのが祖型とみられますが、これは蓆を八枚重ねたものと考えられています。

ここから進化して、平安時代頃には現代の八重畳が完成しました。 

これは、神様の御座する「御神座(ごしんざ)」に使用する特別な敷物で、下から順に厚畳(あつじょう)、八重畳、龍鬢(りゅうびん)、お茵(しとね)の順に組み合わせたものです。

製作途中の八重畳の画像。
【製作途中の八重畳】

再び「八重畳」に話を戻しまして。

八重畳は、神社において神様のみが使われるもので、御神座の中段におかれる畳です。

古来から神様は、何枚もの畳を重ねた上で鎮座されてきました。

八重畳の難しさ

これは、上面の茣蓙(ござ)と、土台になる下段の畳の間に茣蓙を6枚重ね、それらの茣蓙の縁を同じ赤い繧繝錦【最高峰の畳縁】の模様を少しづつずらせながら側面に表れる模様を一体化し、土台を含めて畳の八段重ねを表現しています。

この八重畳の工程は畳の究極と言っても過言ではありません。

金井さんは この八重畳を本格的な作り方で仕上げました。

完成した八重畳の画像。
【完成した八重畳。 写真提供:金井畳店】

苦難の末、ついに八重畳は完成しました。

私には見事な出来に思えたのですが、金井さん曰く「まだまだの出来、次も頑張ります」。

この折を見て再び挑むとの決意に、まさに「屠竜の技」の故事を思い出したのでした。

「屠竜の技」と金井さんのお話しは、次回に続きます。

【目次】その1:日本文化と畳 / その2:畳のすばらしさとは? / その3:伝統の技に挑む / その4:伝統の技-八重畳編― / その5:伝統の技を伝えるのはなぜ? / その6:日本の伝統を明日につなぐ

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