前回は日本刀の歴史や種類、構造など、日本刀の基本について、実物を見ながら学んできました。
まだ子供たちの緊張が取れていないと判断したのか、長岡さんは実際に日本刀を手に持ってみることを提案します。
子供たちは少し怖がったので、まずは居合に使う模造刀を使って日本刀の扱い方を学ぶことにしました。
まずは抜いた刀を一人ずつ手に持ってみます。「うわあ、重い!」「こんなの振り回せない!」手に持った子供たちは歓声をあげました。どうやら生徒たちの緊張は一気に解けたようです。
次に、実際に鞘に納めた刀を抜いてみる体験をします。
刀を抜くためにまず「鯉口(こいくち)」を切らなければなりません。
ここで、鞘とハバキの役割の説明があり、そこから日本刀がいかにデリケートなものなのかを教えてもらいました。
ここで内容を少し具体的に見てみましょう。
鯉口とは刀の鞘の口部分のことで、ハバキとは刀身の手元部分、鍔の先に取り付ける金具です。
実は日本刀は長さや反り、幅などが異なって、それぞれが微妙に違う形になっているので、刀の形に合わせて鞘がオーダーメイドされるのです。
この鞘と刀がピッタリ隙間なく作られていると、擦れて刀が痛んでしまいます。
そこで、鞘の中の刀は鯉口・ハバキ部分でだけ支えられていて、他の部分は宙に浮いている状態にしているのです。
それと同時に、鞘と刀身に取り付けたハバキとの摩擦で簡単に刀が抜けないようにするストッパーの役割をしていて、このストッパーを外すことを「鯉口を切る」と言うのです。
二人とも鯉口を切るのに大苦戦、映画のようにチャキン!といい音をさせて簡単に抜けると思っていただけに、予想外の出来事にびっくり仰天です。
そしていよいよ刀を抜くのですが、刀が思ったより長く、鞘からなかなか抜けません。
ようやく抜けたと思ったら、今度は刀を鞘に納めるのにまたまた大苦戦、「刀を使うのって難しい、でも楽しい!」と大はしゃぎです。
ここで長岡さんから、日本刀から生まれた慣用句、「切羽詰まる」「元の鞘に収まる」などについて解説がありました。
参加者一同、日本刀と日本文化の深い結びつきを体感して実感。
日本刀に親しみがわいたところで、長岡さんが日本刀の見方についての話が始まります。
まずはここまで使ってきた模造刀と真剣を並べて、みんなでじっくりと観察をします。
「模造刀は刀の波々がわざとらしいけど、本物は自然だ」、「鉄の色が全然違う」、「光り方が模造刀はギラギラして嫌な感じだけど、真剣は透明な感じの光り方だ」、「よく見ると鉄に細かい模様みたいなのが入ってる」などの意見が出ました。
長岡さんが、一つ一つその理由を解説してくれたので、一同で日本刀の深い味わいと魅力に大いに感じ入ったのです。
日本刀への理解が深まったところで、長岡さんが できたばかりの新作日本刀、研ぎ上がった日本刀、錆付いた脇差の三点を並べてくれたので、みんなで この三本の刀を見比べて再びじっくりと観察します。
出来たばかりの日本刀は、おおざっぱにヤスリがけしてあるものの、表面には細かな凸凹が多く、ほとんど光りません。
刃文も見えないので、刀の景色を見ることができないのです。
「なんだか工業製品みたい」との声が。
斬るだけならば、この状態でも不可能ではありませんが、先ほど見た日本刀とはだいぶ様子が違います。
逆に、錆びた刀は赤茶けた錆びに覆われて、やはり光沢は失われ刃紋も隠れてしまっています。
こちらも研磨された日本刀とは似ても似つかない様子で、見ていて悲しい気分になってきたのでした。
一方で、研磨された日本刀には鋼の持つ独特の風合いと美しい刃文、磨き抜かれた艶と輝きがあり、景色や風情を味わうことができます。
「これはもう、全然違うものだね」「研磨すると同じになるの?」という質問が出ます。
長岡さんから、刀の持つ魅力を最大限に引き出すために、表面を手間暇かけて磨き上げるのが研師の仕事です、との説明がありました。
研師は日本刀全般に深い造詣を持つとともに刀の持つそれぞれの特性や魅力を見極めて、刀を最高に美しい状態に磨き上げる役割を果たしています。
ですから、出来上がったばかりの粗い刀も、錆びてしまった脇差も、これから長岡さんが磨き上げて美しい刀へと生まれ変わらせるのです。
次回では、日本刀の魅力について角度を変えて探っていきましょう。
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