台東書道展 書道の本場の子供たち①

小学校や中学校で、子供たちは書道の授業にはげんでいます。

その作品は、学校で展示されたあとどうなるのかご存じですか?

じつは、優れた作品を集めた展覧会が上野の東京都美術館で行われるのです。

それが台東書道展、いわば地域の学校の代表が書道の腕前を競う場といえるでしょう。

そして、台東書道展が開かれるのは、書道の本場とされている東京・台東区の長きにわたる書道と書道教育の蓄積が背景にあるのです。

そこで今回は、地域の隠れた魅力を発掘する鳥蔵柳浅が、台東書道展をご紹介したいと思います。

「江戸芝居三階之図」(歌川豊国(初代)1802~3、大英博物館)の画像。
【実は、書道と芝居は縁が深く、台東区が長く芝居の街だったことも関係あるのかもしれません。「江戸芝居三階之図」歌川豊国(初代)1802~3、大英博物館】

【書道の本場の子供たち】①台東書道展②小学校書初め展③中学校書初め展

台東書道展の入り口の画像。
【令和元年の台東書道展入り口。】

台東書道展とはどういった展覧会なのでしょうか?

それは台東書道連盟が主催、東京都・台東区・台東区教育委員会・台東区民新聞が後援する全国公募の展覧会です。

会場は上野公園内の東京都美術館で例年7月最終週に開催されています。

戦後間もない昭和26年から始まって、令和元年で第69回を数える歴史ある展覧会なのです。

この展覧会は、高校生以上が対象の一般部(漢字部・かな部)と中学以下の教育部の二部にわかれて展示されています。

入選・入賞し子供たちの作品の画像。
【入選・入賞した子供たちの作品です。】
入賞した大人たちの作品の画像。
【入賞した一般部の作品です。】

この展覧会では、優秀な作品の作者に以下の賞が与えられます。

一般部:文部科学大臣賞、都知事賞、大賞、準大賞

一般部漢字:名誉理事長賞、台東区民新聞社賞、台東書道連盟賞

一般部かな:理事長賞、台東区民新聞社賞、台東書道連盟賞

教育部:特待生大賞、特待生賞、台東区長賞、台東区議会議長賞、台東区教育委員会賞、理事長賞、台東書道連盟賞

区内の小学校の出展作品。たくさんの子供たちの書道作品が並びます。
【区内の小学校の出品作品。小学生たちの力作が並びます。】

そしてこの展覧会には、前にみた一般部・教育部とは別に、区内の区立小学校19校、区立中学校7校から選ばれた作品が出展されています。

台東区内の中学校出品作品。中学生たちの書道作品が並びます。
【区内中学校の出品作品。中学生も頑張って書道を習っています。】

そのほかにも、台湾やマレーシアなど海外からの出展が多いのもこの展覧会の特徴となっています。

なかでも、台湾の彰化縣僑信國小學校から選抜した生徒の作品がまとめて出品されているのが目を引きます。

台湾の小学生たちの作品。見事な作品が並んでいます。
【台湾、彰花縣僑信國小の子供たちの作品です。さすが漢字の国、立派な作品が並んでいます。】

ところで、台東書道展とはどのような歴史を持つ展覧会なのでしょうか?

その歴史は、展覧会を主宰する台東書道連盟の誕生と軌を一にしています。

同連盟は、昭和26年(1951)2月26日に浅草公会堂楼上で台東区書道連盟創立準備総会を開催、準備を重ねて同年3月に正式に発足しました。

その設立の趣旨は、「すぐれた伝統書道をうけつぎ、その興隆を図ると共に情操を高め、美意識を向上せしめ、ひいては日本文化の発展に寄与せん」(細井惠山(引用文献1))というものです。

台東書道連盟の理事先生方の作品の画像。
【現在の台東書道連盟の理事先生方の作品。】

設立の当たっては、台東区内にあった書道の主要6派が連合し、台東区と台東区議会の支援の下、文房四宝用具店・表装師9社からの協力を得ています。

そして設立後間もなく、「将来の発展を期待して地域的印象にならぬよう」(細井惠山(引用文献1))、「区」の文字を省きました。

記録には「長い戦争が終わり、明るい未来に向けての希望と熱気に満ちた船出であった」と設立時の様子が記されています。

そして設立年の夏から台東書道展を実施し、現在まで続いているのです。

改めて設立当初の台東書道連盟についてみてみましょう。

設立発起人には、荒井君石、大沢松亭、岸本緑渚、小山勘一、近藤碧峰、佐久間庸渚の六人の書家が名を連ねています。

そして初代理事長に村田龍岱、副理事長は塩原雲浦と國岡竹畦、第三回からは初代事務長に竹田悦堂という体制で発足ています。

現在に至るまで、「各流各派が「和」を重んじて偏らず相互に尊重し合い、書道文化の発展に努めてきた」と現役理事の方からお聞きしました。

物故された前理事長 南房泰碩先生の作品の画像。
【物故された前理事長 南房泰碩先生の遺墨。】

地域の子供たちは台東書道展で発表すべく、学校の書道の授業に、あるいは書道会での練習に励んできました。

この展覧会では、子供たちが頑張った成果をたくさん見ることができました。

また、台東区には台東区立書道美術館(書家の中村不折旧宅)や東京蓺術大学が所在するなど、現代の書道や書道教育の中心地のひとつでもあります。

ですので、台東書道展は日本書道の現在を知ることができる展覧会にもなっているのです。

上野の東京都美術館の外観画像。
【上野公園の東京都美術館。】
東京都美術館のフロア案内の画像。
【東京都美術館のフロア案内。この時期は様々な書道展が開かれています。】

みなさんもぜひ、子供たちの頑張りを見届けに上野の東京都美術館で台東書道展に足を運んでみてください。

「文窓竹雅」(八島岳亭、メトロポリタン美術館)の画像。
【「文窓竹雅」八島岳亭、メトロポリタン美術館】

この文章を執筆するにあたって以下の文献を引用しました。

また、本文中では順不同、敬称略とさせていただきました。

引用文献1:台東書道連盟発行 記念行事運営委員会編「書 台東書道連盟40周年記念図録」平成2年(1990)

地域の隠れた魅力をご紹介する鳥蔵柳浅。今回は台東書道展をご紹介します。 【書道の本場の子供たち】①台東書道展②小学校書初め展③中学校書初め展

2 件のコメント

    • 岡部江里子様

      コメントありがとうございました。

      この記事で紹介した台東書道展は、学生も参加できる公募展となっています。

      例年、4月に要項が発表されております。
      また、今年から台東書道連盟のホームページにも掲載予定、申し込みもこちらからできるとのことでした。
      よかったらご検討ください。

      まずは取り急ぎ用件のみにて失礼します。
      最後になりましたが、寒さ厳しい折、くれぐれもご自愛ください。
         鳥蔵柳浅

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