前回まで竜閑さくら橋の特徴についてみてきました。
私の印象では、この橋はなにより「目立たないこと」に特化しているように思えてなりません。
これだけ手間をかけて目立たなくしているのはなぜでしょうか?
この問題を解くヒントをくれたのも、この橋に電車を見に来た男の子でした。
父親と来ていた小学校1年生くらいのその男の子は、私が写真撮影の許可を求めるとこういったのです。
「この橋は夜がスゴイんだよ!」横で彼の父親もにこやかにうなずいています。
私は耳寄りな情報をくれたお礼を言って帰ったものの、内心は半信半疑でした。
そして翌日、夕飯の片づけをさっさと終わられて竜閑さくら橋に急ぎます。
午後8時前に到着すると、なんと階段が暗闇に浮かび上がっているではありませんか!
光に彩られた階段を上り切った私の目の前には・・・まっすぐに伸びる光の道でした。
わずかに見える東京駅を目指して、ビジネス街を突き抜けてどこまでも進んで行けそうです。
たしかに、男の子のいう通りでした。この橋は、夜がすごかった!
なにせ美しい、幻想的で東京のど真ん中であることを一瞬忘れてしまいそうです。
高欄にはめ込まれた照明は、少し暖かい光の間接照明で橋全体を光で浮かび上がらせていました。
路面だけでなく、高欄と桟を照らしているので、ぜんたいが穏やかな明るさに包み込まれる快適空間となっているのです。
特に、二本の桟が独特の角度で交わる姿が美しく照らされ、それがリズミカルに並んである種の機能美をみせてくれています。
これが見る角度で表情を変えていくものですから、まるでランウェイのような巨大な演出装置に立っている気分になりました。
美しく照らし出されたこの橋は、私たちの足元だけでなく、我々が進む未来をも指示しているかのようです。
例えばスケルトンのエレベーター、前に見たように昼間見てもわかりやすいように工夫されていました。しかし夜になるとその表情が一変していました。
見て美しいだけでなく、エレベーターの位置をわかりやすく示すと同時に、この橋の美しさを劇的に見せるある種の仕掛けにもなっています。
いうなれば、お姫様が登場する舞台口やせり出しのようになっているのです。
そうです、この橋は一つのストーリーを持った舞台になっているのです。
いうなれば、渡る人すべてをシンデレラに変えてしまう、まさに魔法の舞台!
このように、夜の竜閑さくら橋は、昼の顔とはがらりと変わって、まさに一躍、この町の主役となっています。
今回は、この橋の夜の顔を見てきました。
次回では、この橋が示してくれる未来について思いを巡らせてみましょう。
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