数年前のことです。
梅雨がはじまったばかりの肌寒い小雨まじりの日でした。
ぎゃあぎゃあケンカばかりしている娘たちにうちの奥さんがキレて、とうとう私付きで家から追い出されてしまいました。
どうしようか三人で相談しながら両国橋を渡り、隅田川テラスに降りてもまだグダグダと相談していた時です。
ふと前から気になっているものが目に入ったので、二人に聞いてみました。
「ちょっとあれ見てみて!首都高が隅田川を渡るとこ、よーく見て。」「どこどこ」と気だるそうに娘たち。
「ほら、あの上下に高速がなっているところだよ。」
何だろうかといった面持ちで、二人が私の指さす方を見ています。
「ここでクイズです。高速の上下をつなぐワイヤーは、いったい何なためにあるのでしょうか?」
クイズと聞いて、娘たちの目がキラキラしてきました。
「なんかの飾り!」下の娘が即答すると、「じゃあ、なんであそこだけなの。もうちょっと考えなよ!」と姉が即ダメ出し。
「じゃあ、生き物たちの通り道!」懲りずに妹が叫びます。
「だから~、じゃあなんであそこだけなんだよ!川につながってないから、あんたの言う生き物たちは車にひかれちゃうでしょ!ほんともう、ばっかじゃないの!」
間髪入れぬ姉のダメ出しに、妹は目に涙を浮かべて「ばかはお姉でしょ!じゃあなんなの、言ってごらんよ!」と必死の反撃です。
「うーん、地震か何かでずれないように補強しているのかなあ・・・」さすがお姉ちゃん、東日本大震災を経験しているからか、なかなか良い答えです。
「じゃあなんであそこだけなの!やっぱお姉ちゃん、ばっかだね!」妹、渾身の反撃が即座に繰り出されます。
若干怒気を含んだ声でお姉ちゃんが、「それで、どうなの?」と私に聞いてきます。
そこで、私の説を話しました。部分的な「吊り橋」説です。
首都高は用地買収にかかる時間と費用を抑えるために、東京を縦横に走っていた堀や川の上を通っています。
堅川の上を通す小松川線と、隅田川左岸を通る向島線を限られたスペースで合流させるために、一部を川の上で上下二層構造にするしかありませんでした。
ところが、堅川河口には巨大な水門(堅川水門)があるうえに、堅川を通行する船の航路を確保する必要がって、首都高の橋脚が一か所造れなくなってしまいました。
幸い、この部分は高速道路が上下二層構造なので、上を走る路線の強度を上げて、下の路線を吊って支えている、という説です。
「へー、そうなんだ」二人が声をそろえて感心しています。「それ、どこで調べたの?」
「えっ、これはお父ちゃんの説だよ。ホントかどうかはわからない。」
「ギギョエ~~!」獣じみた声で、娘二人が絶叫します。
「答え分からんとクイズ出したの!!」「お父ちゃんヒドイ」「最悪」次々と罵声が浴びせられます。
「そんな怒らんでも。たぶんあってると思うで」「多分じゃあだめなのっ!!」
すっかりお冠の二人に、両国でケーキとココアをごちそうさせられる羽目となりました。
この時は自分の説を話して娘たちにこっぴどく叱られたわけですが、実際はどうでしょうか?
次回からはクイズの答えを探していきたいと思います。
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