神様の畳・八重畳に挑戦する金井功さん、前回も見たとおり、この畳の注文は一生に一度あるかないか。
金井さんは、なぜ伝統の技に挑むのでしょうか?
そこで今回は、金井畳店(東京都台東区浅草橋2‐13‐9)〔http://www.tatamiya-kanai.com/〕(https://www.facebook.com/tatamiya-kanai/)の金井功さんの仕事ぶりから、伝統を受け継ぐとはどういうことなのかを見ていきたいと思います。
【金井畳店 目次】その1:日本文化と畳 / その2:畳のすばらしさとは? / その3:伝統の技に挑む / その4:伝統の技-八重畳編― / その5:伝統の技を伝えるのはなぜ? / その6:日本の伝統を明日につなぐ
最高難度の畳、八重畳製作に苦闘する四代目金井功さんの姿を見て、「屠竜の技」という言葉を思い出しました。
この言葉は、東京ハイパーレスキューのモットーでもあります。
由来は、『荘子 列禦寇篇』にある「(人々に災いをもたらした)竜が死に絶えたのに、これを屠る技を苦労して修めるものがいる」という故事から、本来は「意味のないこと、無駄なこと」という意味で用いられています。
しかし、ハイパーレスキューの隊員は、「万が一にも万全を、私たちができないと諦めたら、目の前の命は失われてしまう、そう思って取り組んでいます。」大災害を竜に例えて、その覚悟をこの言葉に託したのです。
金井さんが挑んだ八重畳。
そしてこの「八重畳」をはじめとする儀礼用の畳は、有職故実【ゆうそくこじつ:公家・武家の礼法。日本の礼儀作法の規範で、日本が誇る「おもてなしの心」の大元】には欠かせない重要なもの。
しかし、「八重畳」の注文は一生に一回あるかどうか。
ですので、いつ失われてもおかしくない技術と言ってよいでしょう。
この困難な課題に、謙虚かつ誠実に向き合う金井さんにこそ、この言葉がふさわしいと感じたのでした。
金井さんのように、たとえ経済的利益に繋がらなくとも、受け継がれた技を磨いて後世に伝える、この一見無駄とも見える努力が日本の伝統文化を守っているのです。
完成した八重畳モノマチ11で公開され大好評を博しました。
今後も、台東産業展をはじめとするイベントで公開される予定とのことです。
みなさんもぜひ金井さん作の八重畳を見て伝統文化と技術の素晴らしさを感じてみませんか?
この文章をまとめるにあたって、以下の文献とサイトを参考にしました。ここに記してお礼申し上げます。: 三谷一馬『江戸職人図聚』1984立風書房、『目で見る江戸職人百姿』1985国書刊行会編・発行、渡辺信一郎『江戸の生業事典』1997東京堂出版、『江戸東京の諸職 下-東京都諸職関連民俗文化財調査報告-』1994東京都教育庁生涯学習部文化課、『畳の魅力』2013全国い産業連携協議会、国史大辞典編纂委員会編『国史大辞典 第9巻』1988吉川弘文館、『うすいけど やわらかい』金井畳店リーフレット、「創業300年 浜田畳店」HP
次回は、金井畳店がおこなっている畳の魅力を次世代に伝える取り組みについてみてみたいと思います。
この町には素晴らしいものを作る方、最上の技術を持つ方が多くいらっしゃいます。
例えば、和菓子や豆菓子、佃煮、畳、団扇や茶筒、革製品、革靴、クルミボタン、シャツ、写真、日本刀研磨などなどです。
鳥蔵柳浅では、町の匠たちを応援しています。
【金井畳店 目次】その1:日本文化と畳 / その2:畳のすばらしさとは? / その3:伝統の技に挑む / その4:伝統の技-八重畳編― / その5:伝統の技を伝えるのはなぜ? / その6:日本の伝統を明日につなぐ
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