「学問の秋」の実践版、修学旅行は日本人の誰しもが経験した行事ではないでしょうか。
じつは、その内容は時代とともに変化しているのを御存じでしょうか?
そこで、現在の修学旅行の様子を、鳥蔵柳浅の活動範囲である東京都台東区南部の小学校を例にみてみましょう。
台東区の小学生の修学旅行はどんなもの?
地域の小学校では、夏休みの7月下旬から8月上旬に世界文化遺産・日光(栃木県日光市とその周辺)で二泊三日の修学旅行を行っています。
そこで、修学旅行準備の手始めとして、修学旅行にあたって数時間程度の事前学習から行います。
日光の歴史と自然に関連するテーマを自分たちで設定して調べてみるのです。
ここでそのテーマの実例を見てみましょう。
それは、「日光東照宮の陽明門ってどこがすごいの?」とか「三猿ってなに?」というような史跡や名所に関連するものや、「戦場ヶ原の植物はどんなのが生えてる?」とか「竜頭の滝ってどうしてこんな形?」といったような自然に関するものといったように多岐にわたっています。
この事前学習ですが、ねらいとしては事前学習をする過程で自分が学ぶテーマを見出すことが期待されているのです。
修学旅行スタート!
そしていよいよ修学旅行当日です。
修学旅行の朝は、みんな大きな荷物を持って小学校に集合することから始まります。
この時、小学生が大きな荷物二つ(携帯用と宿置き用)をかかえて登校するのは大変なので、保護者が付き添う光景がよく見られますが、何ともほほえましい光景です。
そして人員点検をした後、出発を前に簡単なセレモニーを行います。
このセレモニーでは先生方のあいさつや諸注意、生徒代表の出発の言葉などがつづき、子供たちは期待と緊張の入り混じったような面持ちです。
そしていよいよ出発となるわけですが、見送る父兄が列をなす光景は、わずか三日とはいえ子供との別れを惜しむ意外と劇的なものだったりします。
学校の所在地によって交通手段は異なりますが、地下鉄あるいは徒歩で東武浅草駅に移動します。
ここから東武鉄道の特急「けごん」 に乗車して日光までの道中約1時間40分!
この時車中では、トランプをしたり歓談したりと自由な時間、誰もがいよいよ始まった修学旅行に胸躍らせる楽しいひと時です。
日光到着
そして東武日光駅に到着すると、バスや徒歩で目的地に向かいます。
現地での行動は、天候の変化などで予定変更も多くなりがちです。
基本的な旅程の概略を挙げておくと、日中の活動は日光の史跡名勝を巡ったり、戦場ヶ原でハイキングしたり、足を延ばして足尾銅山を見学したりと屋外活動が中心になっています。
一方夜には、日光彫の制作や肝試しなどの体験行事が行われます。
それでは、これらの内容をより具体的に見てみましょう。
日光では何を見る?
世界遺産となっている日光の社寺は見どころが満載で観光客も多いうえに意外と歩く距離も長いので、東照宮・二荒山神社と輪王寺の2ブロックに分けて回ることが多いようです。
〇日光東照宮:徳川家康をまつる神社、陽明門は日光のシンボル。
「眠り猫」や「三猿」などの多様な木彫が見どころの一つです
〇二荒山神社:本殿や神橋などの重要文化財23棟を擁する古社。
〇日光輪王寺:三代将軍徳川家光の廟所・大猷院(たいゆういん)を中心とする重要文化財37棟からなる大伽藍です。
いろは坂
華厳の滝に向かう途中にバスから見学する絶景ポイントで、紅葉の季節にはテレビでよく中継されているのを見かける一大名所です。
国道120号が急傾斜地を九十九折になって登下する二つの坂を合わせた名称で、48の急カーブを「いろは」48字に見立てて命名されました。
ここで子供たちはガイドさんの軽妙な解説と、バスの最後尾がはみ出すほどの急カーブと急勾配に、ジェットコースターさながらの体験をすることになります。
華厳の滝
日光を象徴する名瀑で、この名を耳にした方も多いのではないでしょうか。
中禅寺湖から流れ出た水が、高さ97mの断崖を一気に落下する光景はすごい迫力で子供たちも大喜び!
滝は高さもさることながら、毎秒1~3tともいわれる圧倒的水量と輝石安山岩の荒々しい岩肌、周囲の深い緑が織りなす雄大な景観は古代から多くの人に崇められてきました。
そういった歴史もガイドさんが丁寧に教えてくれるのだとか。
華厳の滝では、滝つぼまで歩いたのちエレベーターで滝の上まで移動して、滝の絶景と独特の自然環境を堪能します。
奥日光の湿原
ラムサール条約登録湿地である奥日光の湿地は、大きく戦場ヶ原と湯の湖、湯川、小田代原があります。
このうち、戦場ヶ原の赤沼ハイキングと 湯川の竜頭の滝見学を行います。
〇赤沼 戦場ヶ原は、標高約1,400mにある高層湿原で、この南端部に位置するのが赤沼です。
赤沼自然情報センターでこの地域の自然についての説明を受けた後、約3㎞のハイキングを行います。
修学旅行の時期は、ちょうどワタスゲやホザキシモツケが見ごろ。高原の爽やかな風が心地よい楽しいハイキングが待ってます!
一方、山の天気ですので厳しい暑さや霧や雨も多く、中止になったり過酷なハイキングになることもあるのだとか。
終点の赤沼茶屋で食べるソフトクリームが思い出に残る味です。
〇竜頭の滝 日光五名瀑の一つで、滝の全長210m、幅10m。上半は斜漠、途中で二手に分かれて豪快に落ちる滝は見ごたえがあります。
標高1,350mに位置することもあり、滝周辺はさわやかなマイナスイオンでいっぱい!
ちなみに名称は、二股の滝を遠望すると竜の頭に見えるから、とか中央の岩が竜の頭に見えるから、とか二股の滝をお寺の鐘の竜頭(鐘の頭部にある、鐘をかけるための環)に見立てたなど、諸説あるようです。
足尾銅山
400年の歴史を誇る銅山の跡です。
明治時代には日本一の銅山ともいわれ、昭和41年の廃坑まで長く掘り続けられてました。
旧坑道の一部、約700mが整備されて鉱山採掘の様子などが人形を使って分かり易く展示されています。
ここでの最大の楽しみはトロッコ電車、ステーション(メインエントランス)から坑道入り口までの約400mを3分程度で走るのですが、見慣れないトロッコ列車に子供たちは大興奮!
この乗車体験を、修学旅行の思い出の筆頭にあげる子供も多いのだそうです。
夜間に行う行事、日光彫制作と肝試しについても見てみましょう。
日光彫制作
日光彫とは彩色した木材に、日光の風物を彫り込んで制作するものです。
日光では古くから漆塗り工芸が盛んで、そこから派生しておみやげ物になったもの、現在は手軽に工芸体験ができるワークショップとしても人気です。
子供たちは事前に手鏡、写真立て、盆、ペン立てなどの中から好きなものを選んで、夜に宿舎で制作します。
出来上がったものはそのままお土産となるので、みんな真剣に取り組むのだそうです。
肝試し
行事の性格上、内容は秘密にしてほしいとのことでした(先生談)。
都会にはない夜の暗さを体験する、というのが隠れた目的なんだそうです。
残念ながら雨が降ると危険なので中止になってしまいます。
そのほか、利用する宿舎によっては実施しないところもあるそうです。
このイベントは性質上謎だらけですが、子供たちから絶大な人気を集めているのは言うまでもありません。
帰路
楽しかった修学旅行もいよいよ最終日、生徒たちはバスで東武鉄道日光駅あるいは古市駅に移動して、特急「けごん」で帰路につきます。
帰りの特急内は自由時間なのですが、ほぼ全員が車中の約1時間40分、深い眠りにつくそうです。
東武浅草駅からは、徒歩や地下鉄で学校へと向かいます。
そして極度の疲労に重い荷物、全員無言で疲れ切った足を引きずりぞろぞろ歩かなければなりません。
私もこの光景に何度か出くわたことがありますが、なかなか壮絶なものでした。
そしてようやっと学校に帰り着くと、多くの保護者が迎えに来てくれています。
その姿を見て子供たちも一安心、最後に帰還式に臨むことに。
先生方からのお話、生徒代表の感謝の言葉、連絡事項の伝達のあと解散となり、修学旅行はおしまいです。(家に帰るまでが修学旅行!先生談)
わずか三日間とはいえ、一回り成長した子供たちの姿に親御さんたちも喜びを感じる忘れがたい行事、それが修学旅行です。
最後になりましたが、修学旅行について教えてくれたかつての小学生のみなさまに深く御礼申し上げるところです。
また、私たちの町の小学生は、さまざまな学校行事を通じて成長していきます。入学式にはじまり、写生大会、町探検、七夕、運動会、遠足、学芸会と音楽会、席書会、そして修学旅行と卒業式。
そして六年間で様々な体験をして大人になて行く子供たちを、町のみんなで見守っているのです。鳥蔵柳浅では、子供たちの地域学習と、それを支える町のみなさんを応援しています。
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