金色の東京(その3) 東京と銀杏の素敵な関係

前回まで、東京の黄葉の名所を巡ってきました。

今回は、そもそもどうして東京に銀杏が多いのかという謎を解き明かしていきたいと思います。

金色の東京 目次①山吹色に染まる街②冬の訪れを告げる色③東京と銀杏の素敵な関係

地域の隠れた黄葉スポット①榊神社の画像。
【地域の隠れた黄葉スポット①榊神社】

生きた化石とも称される銀杏ですが、成長が早く手入れも簡単、火災にあってもよく再生すると重宝され、寺院や神社に多く植えられてきました。

その種子ギンナンは食用に珍重され、弾力があり美しい材は木魚や工芸品に広く使われるなど、銀杏の木は江戸・東京の街に欠かせない存在となったのです。

若菜集時代の藤村(『藤村全集 第2巻』島崎藤村(藤村全集刊行会、大正11年)国立国会図書館デジタルコレクション)の画像。
【若菜集時代の藤村(『藤村全集 第2巻』島崎藤村(藤村全集刊行会、大正11年)国立国会図書館デジタルコレクション)】

「東京は何うみても武蔵野に建てられたる都会という感がある。殊に町中に残って居る銀杏をみると其の感じが深い。風が吹き揚げる砂埃、屋根の間に沈む夕日、それ等も都会でなくては見られぬものだ。」【島崎藤村「都会の情調」『読売新聞』明治43年5月22日号〔文献1〕】

銀杏の木に武蔵野を思う藤村は、銀杏は中国原産なので一部誤解があるものの、現代に住む私もうなずく東京らしい光景を見事に描き出しています。

地域の隠れた黄葉スポット②竹町公園の画像。
【地域の隠れた黄葉スポット②竹町公園】

「東京都の木」を選定するにあたって行われた都民代表による投票では、イチョウが49%を得票して選ばれています(ケヤキ32%、ソメイヨシノ19%、東京都生活文化局HPによる。ソメイヨシノは東京の花)。

どこにでも生えていて、黄葉が美しく、種子もうまい銀杏の木は、今や東京を象徴する存在となっています。

私は、銀杏の持つ強い生命力が 、確かにどこか東京という街に似ていると思うのです。

銀杏の絨毯で遊ぶ親子の画像。
【銀杏の絨毯で遊ぶ親子。銀杏岡八幡神社にて。】

ところで、イチョウの木には問題が二つあるのをご存知でしょうか?

一つはもちろん、あのギンナンの臭いです。

強烈な臭いは靴に着くとなかなかとれず、厄介なことこの上なし。

もう一つは、イチョウの落葉が一気に進むことです。

あの大量の葉の大部分が、 わずか一日ほどで落ちるというのだから驚きます。

銀杏の落ち葉は、地面を黄色一色に染めて大変美しい景色を作り出す一方、これを片付けるのはとても大変。

寺院や神社では、境内に積もった銀杏の葉を片付けるのに多くの人出が必要になってくるのです。

檀家や氏子が協力して清掃する場面に出くわすと、私はなんだか申し訳ない気分になるのでした。

みなさんも改めて、東京を代表する木、銀杏の黄葉を見上げてみてはいかがでしょうか?

【引用文献】文献1:島崎藤村『藤村全集』昭和41年~43年(1966~68)筑摩書房

【金色の東京】①山吹色に染まる街②冬の訪れを告げる色③東京と銀杏の素敵な関係

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です