もう30年ほど前の話です。
太田道灌の作った江戸城が発掘されたと小耳にはさみました。
それが竹橋ジャンクション付近だと聞いたのですが、その場所がわかりません。
ちょうどR君がお手隙みたいだったので、ちょっと聞いてみることにしました。
「竹橋って・・・」質問を終わらぬうちからR君の目がきらりと光ります。
私の言葉をさえぎって「なんと、竹橋ですか!じゃあ、当ててみましょう!竹橋と言えば毎日新聞社、いやいや、やっぱり竹橋そのものですね!」ちなみに、竹橋北詰には毎日新聞社(写真の円筒形の建物とその周辺ビル)です。
「うーん、あれは不思議な橋です。メルヘンチックというかロマンチックというか・・・。わたくしは、あの「場違い感」、ケッコウ好きなんだわ。」
ここまで一気にまくしたてるR君。
その時、こちらに近づく一つの影が!「なんか楽しそうな話ししてますやん!」
髭ダンスを思わせる不思議なしぐさを繰り返しながら近づいてくるこの男、への字に結んだ口元にシャレた形の眼鏡の奥にはキラキラと好奇心あふれる目が輝いています。
彼は通称「坊主町君」、私の同僚で、博覧強記を地で行く人物です。
「ほう、竹橋ですか!」R君から説明を聞いて歓声を上げる坊主町君。
このあと、R君は呼ばれてどこかに行ってしまいました。
そんなことは気にも留めないといった風情で、今度は坊主町君が語り始めます。
「竹橋ね、あの橋には苦い思い出があるんですよ。べつに橋が悪いんでなくて、自分がものを知らんかったというだけの、ちょっと恥ずかしい話なんやけどね。」
「実は、竹橋のせいで第一希望の大学、落ちてもうたんですわ・・・。」
なんだって!竹橋って大学入試出るくらい有名なの?
「竹橋事件ちゅうのがあったんです。私、それ全然知らんかったもんで、問題一つ落としてもうたんです。」
坊主町君の熱弁はつづきます。
「今でもたまに用事があって竹橋を通らんとあかん時があるんです。それが年に数回も。その度に、大学落ちたイヤーな思い出が頭をよぎります。もちろん、橋にも竹橋事件にも罪はないんです、でもいやな気分は抜けンのですわ。」
「そもそも、橋というのは機能が第一、十分な強度と耐久性があって、それでいて使いやすいのが基本中の基本です。
そこへ行くと、あの竹橋はどうですか!あんなんいります?
華美に過ぎる、ゴテゴテと飾りが多すぎる。
いや、そもそも江戸城にモダニズムはそぐわんと思うんですわ。」
坊主町君がそこまでぼろくそに言うのは珍しいことです。
八つ当たりのようにも思えますが、華美すぎるゴテゴテした橋ってどんな橋だろう?
R君はメルヘンチックでロマンチックといってました。
場違い感たっぷりというのは二人の共通する見方です。
いまだ見たことのない橋の評判を聞いて、私は思わずいろいろと妄想をめぐらしてしまうのでした。
それでは次回からは竹橋がどんな橋なのか、見てみることにしましょう。
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