前回、平潟に上陸した新政府軍が本格的攻勢に討って出たところをみてきました。
そして次の戦場は、湯長谷と戦略的要衝の原城へと移っていったのです。
そこで今回は、湯長谷城(陣屋)と原城攻防戦をみてみましょう。
湯長谷落城
前回みたように、新田坂で勝利した新政府軍は、平潟防衛に廻った柳川藩のかわりに岡山藩が加わって、勢いに乗って湯長谷へ進軍します。
いっぽうの同盟軍は、途中に昼野北方に陣地を構築して抵抗するものの、これをあっさりと占領されたうえ、さらに泉田付近に布陣していた軍勢が砲撃されてしまいます。
こうなっては同盟軍はたまらず湯長谷方面に退却、すると新政府軍はそのまま湯長谷城(陣屋)を目指して進撃しました。
いっぽうの湯長谷城は、藩主に従って藩兵は高野に退避しており、ほとんど守備兵のいない状態でした。
そこで新政府軍は、いとも簡単に湯長谷城を占領したのです。
第一次平城攻撃
そして湯長谷を拠点に、新政府軍は平城攻撃に移ります。
慶応4年(1866)7月1日から新政府軍は平城への攻撃を開始しました。
しかし増援に来た米沢藩と、仙台藩と平藩からなる同盟軍も、各方面に堡塁を築いて応戦し、同盟軍の頑強な抵抗に新政府軍は苦戦をしいられていたのです。
そこで、大総督府は新たに参謀・四条隆謌を仙台追討総督に任命し、平潟に軍司令部を置くとともに、次々と増援部隊を送り込みます。
11日には白川口の棚倉支軍司令官板垣退助らも合流し、13日の平城総攻撃が決定されました。
この時点で、柳川藩も平潟から平城攻撃に合流しています。
第二次平城攻撃
そして13日夜も明け前の3時30分、平城総攻撃がはじまりました。
攻撃は、小名浜から攻撃する本隊と、沼の内から攻撃する右翼隊、湯長谷から攻撃する左翼隊と、三方向から平城に迫ります。
ここで柳川藩は左翼隊に属して、印旛、岡山、佐土原とともに湯元へ向かって進撃しました。
すると平の城下まで進んだところに同盟軍の陣地が構築されており、ここから激しく攻撃をしてきたのです。
そこで、左翼軍も兵を三分して進撃する作戦に出ます。
まず印旛藩は右側の山手間道を進み、岡山と佐土原藩は左の裏手に回って攻撃、さらに柳川藩と岡山藩一小隊は本道を進んで長橋口から攻撃を仕掛けました。
長橋口攻防戦
柳川藩と岡山藩一小隊がしばらく進むと、右側から同盟軍が発砲してきたので反撃を加えると、同盟軍はすぐに退却しました。
さらに本道を進むと、左の山上から敵が大砲で砲撃したうえ、足軽屋敷の林と長橋詰から小銃で激しく銃撃してきたのです。
これに大砲隊と諸隊で激しく反撃しましたが、両軍の激しい銃撃戦で戦況は一進一退、新政府軍は攻めあぐねて大変苦戦となりました。
そこで、新政府軍は大砲隊を進めて敵軍陣地中央めがけて集中砲火を加えます。
これにより同盟軍は混乱に陥ったところをすかさず小銃隊を前に進めて集中して攻撃、するとついに同盟軍は敗走を始めたのです。
そこで長橋を追い崩し、柳川藩兵は大手門をまず登って、槌門から不明門内まで進みました。
ここでも同盟軍の兵が城門脇の山から大小の砲で激しく砲撃して必死に防戦してきます。
こうして戦況が膠着したうえに、すでに日が暮れていましたので、新政府軍は兵を関村まで引き揚げました。
すると、なんとその夜に同盟軍は城に火を放って退却したのです。
平城攻城戦での柳川藩は、今村関之丞と十時仙之進が戦死、大砲隊長蜂谷一学ほか9名が深手を負い、隊長石川十郎右衛門ほか6名が負傷しています。(「八月廿四日 柳川藩届書冩四通」『太政官日誌 慶応4年戊辰秋8月 第66』)
平城攻落城の内実
二度にわたる平城攻防戦は、平藩兵の奮闘が光るものの、古来から勿来の関が置かれた要衝の地・磐城平を同盟軍が失う結果となり、情勢は新政府軍の有利に傾きました。
じつはこの重要な戦いの裏では、ちょっと信じられないことが起こっていたのです。
まず、平城総攻撃と同じ7月13日の午後、城内にいた平藩先代藩主安藤信正が家臣たちの進言により、旧幕府純義隊に守られて城を脱出します。
ところがこの時、城内を守備していたはずの仙台藩兵はすでに無断で撤退していました。
気が付くと、城内にとどまったのは平藩兵と若干の相馬藩兵のみという状況になっていたというから驚きです。
そこで守備兵は、これ以上の籠城戦は無理と判断、城に火をかけて撤退することになりした。
こうして7月14日、新政府軍は平城に入ります。
ほどなく、平潟口総督四条隆謌とともに大和郡山藩、福岡藩、広島藩、久留米藩、長州藩、岩国藩と援軍が続々と来着し、新政府軍はますます増強されていきました。
ついに同盟軍の重要拠点・平城が陥落し、浜通り地域での戦況は新政府軍が優位に立ったのです。
このとき、同時並行で進んでいた中通り地域での戦況はどうなっていたのでしょうか。
次回は少し時間をさかのぼって、白河口の状況をみてみましょう。
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