日本最初のランガー橋 総武線隅田川橋梁その2

前回見たように、関東大震災の復興で両国~御茶ノ水間が延長されることとなった総武線、その隅田川橋梁を日本で初めてランガー橋にすることになりました。

これまでは鉄道橋では通常は設計が容易で工事もしやすいトラス構造を用いることが多いのですが、あえてランガー桁橋を採用したのには訳があるようです。

完成まじかの総武線隅田川橋梁(鉄道省大臣官房研究所 第四科編「両国鉄道橋設計計算書」シビル社 昭和9年(1934)国立国会図書館デジタルコレクション)の画像。
【鉄道省大臣官房研究所 第四科編「両国鉄道橋設計計算書」シビル社 昭和9年(1934)国立国会図書館デジタルコレクション  よく見ると橋の両端がまだつながっていないので、完成間近の隅田川橋梁です。のちにこの橋は鉄道橋建設のみならず、鋼梁建設の教科書となっていきました。】

どうしてランガー橋?

これまで震災復興にあたっては、永代橋や清州橋、両国橋や蔵前橋などの隅田川に架かる道路橋がことさら重視され、アーチ橋など美しい道路橋が多数建設されてきました。

しかし一般的には、アーチ橋は桁橋に比べて設計が難しく工事も難易度が高いうえに、建設費もかなり高くなりがち。

ですので、建設費が限られる鉄道橋では、実用性一辺倒、つまりトラス橋ばかりともいえる状況にあったのです。

夜の隅田川橋梁に、電車と屋形舟、スカイツリーがライトアップして共演している画像。
【夜の隅田川橋梁に、電車と屋形舟スカイツリーがライトアップして共演しているようです。】

震災後の厳しい条件下でも、帝都復興の一翼を担った鉄道官房研究所は実用と美観を兼ね備えた新しい鉄道橋を模索、その努力がこの橋に見事に結実したのです。

この橋は、隅田川に架かる道路橋に優美さで引けを取らない鉄道技術陣の傑作であり、橋梁設計の教科書に必ず掲載される名橋となっています。 

春の東京スカイツリーと隅田川橋梁の画像。

また、この橋で確立したランガー桁橋は、設計が比較的容易で強度も高く、建設費も抑えられることから広く用いられるようになりました。

こうした意味でも、この橋は日本の橋梁建築に新風を吹き込んだ記念碑的な橋と言えるでしょう。

近年、東京スカイツリーの建設や隅田川テラスの整備によって、この橋の美しさはさらに際立つものになっています。

この景色を目当てに隅田川テラスを訪れる方も多いとか。

そしてゴールデンウィークには「隅田川こいのぼりフェスティバル」、10月にはハゼ釣り大会が開かれるなど、地元住民に愛される場所になりました。

技術者の意地が生み出した傑作、JR総武線隅田川橋梁をゆっくり見てみませんか?

私たちの街には、隠れた名建築が数多く残っています。

古レールを使用したJR浅草橋駅、日本初のランガー橋・JR総武線隅田川橋梁、関東大震災の復興橋である蔵前橋と両国橋、神田川に架かる名橋・柳橋と浅草橋、復興小学校の旧柳北小学校などです。

みなさんも一度、隠れた名建築を訪ねてみませんか?

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