扇橋に狸と聞いて落語の「入船亭 扇橋の狸賽」を期待した方、すいません。
今回はタヌキと扇橋という名前の橋のお話しです。
話しは変わりまして。
新型コロナ休みになっても、学生さんは忙しいようです。
学校からたくさんの宿題が出されているからなのですが、中には変わった宿題もあるようです。
そんな一つが、音楽で「あなたの知っている童謡・唱歌をあげなさい」というのがあったのですが、驚いたことに、つづいて「それを歌いなさい」と書いているではありませんか!
先生方も、これほどユニークな宿題を出すとは、この非常時に大変なご苦労をされていると痛感しつつ、深く感謝するところです。
そしてもちろん、まじめなお姉ちゃんは、この宿題にも手を抜きません。
しかし唱歌の意味が分からず、私にたずねてきました。
「こういうのは自分で調べるもんやでー」といいつつも、真面目に取り組む姿がうれしくて、ついつい教えてしまいます。
合点したお姉ちゃん、そうか、と一声あげた後、突然歌いだしました。
「は~るのおがわは~ さらさらゆくよ~」。
すると、妹も一緒になって歌い始めます。
時ならぬ「春の小川」の合唱が聴けて、ちょっとうれしくなってきました。
「お父さんもなんか一曲!」とお姉ちゃんから一言が。
ちらりと横の妹を見ると、なんとなくあの曲が頭に浮かびました。
「しょ、しょ、しょじょうじ、しょじょじのにわは つ、つ、つきよだ みんなでて こいこいこい!」
身振りを交えて歌うと、妹が大喜びで飛び跳ねながら踊り歌い、お姉ちゃんはおなかを抱えて大笑い。
ぎゃあぎゃあと歓声を上げながらの大合唱となりました。
歌い終わって少し落ち着いたタイミングでお姉ちゃんが私に尋ねます、「狸の腹鼓ってホントにあるの?」
これは なかなかいい質問です。
「お父ちゃんは聞いたことないけど、聞いたって人がいるのは知ってるよ。」
「エッ、まじでー!」とひとしきり騒いだ後、私は次の文章を見せました。
「その時分、深川の小名木川の扇橋の袂には、始終狸が出ていたずらをすると云うことを、私はしばしば祖母や母から聞かされていた。私は、狸が時々大入道に化けて現われるという話を、一番恐れた。私は又、狸の腹鼓と云うものを「ほら、あれがそうですよ」といわれて、遠くの方でぽんぽんと鳴っているのを、現に二三度聞いたことがあった。」【谷崎潤一郎『幼少時代』】
どんな音なんだろう、と大いに盛り上がった後、妹がポツリと一言、「そこに今でもタヌキいるのかなあ?」
「それは調べないと!」となって、さっそく次の日に私が調査することになりました。
次回は、その扇橋についてみていきましょう。
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