前回見てきたように、竜閑さくら橋は地元の子供たちに愛される橋です。
そしてその裏には様々な工夫がなされています。
ここからは、この橋の特徴をみていきましょう。
高層ビル群に囲まれ、首都高にフタされつつも、東京の真中を静かに流れる日本橋川には数多くの歴史的名橋が架かっています。
東京最古の石橋・常磐橋や国家の象徴たる橋・日本橋、大学名にもなっている一ツ橋など、数ある橋のなかで最も新しく造られたのがこの竜閑さくら橋です。
この橋について公開されているデータを集めてみると、
名称:竜閑さくら橋
架橋位置:東京都千代田区大手町2丁目~中央区日本橋本石町4丁目
種別:特別都道の人道橋
事業者:独立行政法人都市再生機構
構造形式:3径間連続鋼床箱桁+鈑桁 橋
橋長:122.042m
支間長:箱桁部:54.400m+40.700m、鈑桁部:20.963m
標準幅員:総幅員 7.0m(有効幅員6.0m)
構造の高さ:箱桁部1.4m、鈑桁部0.9m)
施工期間:2015年9月~2018年3月
架設工法:箱桁部:送出し架設、鈑桁部:トラッククレーンベント架設
建設費用は非公開
名称は千代田区による公募
まず驚くのがその長さです。
橋の長さについて日本橋川に架かる橋を見てみると、日本橋が49.10m、日本橋川河口の豊海橋が46.8m、鎧橋56.7m、一石橋50.2m、常盤橋38.6m、鎌倉橋30.1m、神田橋32.1m、一ツ橋27.0mとなっています。
河口から最も川幅の広い亀島川分岐前で50m前後、竜閑さくら橋の周囲では30mちょっとといったところです。
これに対してこの橋は122m!
神田川に架かる聖橋が91.8m、隅田川に架かる駒形橋が149.1mですから、この橋がいかに長いかがわかります。
さらに具体的に見てみましょう。
「復興局街路橋形式図」(『帝都復興事業大観』)所載の聖橋と、豊海橋、江戸橋、神田橋と比べてみてください。
この図でいうと、竜閑さくら橋の長さは、一番上の聖橋と一番下の神田橋をつないだくらいになります。
大まかにいうと、周りの橋の四本分くらいの長さですね。
どうしてこんなに長いのかというと、「最先端の国際ビジネス拠点である大手町と、日本風情あふれる神田・日本橋をつなぎ、賑わいと人と文化の交流を実現するため」【Otemachi PLACE HP】だそうです。
この橋が日本橋川を渡るためだけの橋ではなく、街と町とをつなぐねらいでつくられた、ということらしいのですが・・・もう少し詳しくみないと分かりません。
そういえば、と昔のこの辺りに来たことを思い出しました。
橋を渡った場所には東京国際郵便局があって、その並びには逓信総合博物館があり、何度か通ったことがあります。
近代的なビジネス街ですが、一方で行き止まりの袋小路的印象でした。
そうか、この橋(赤丸)で思い切って神田につないでしまおうという意欲的計画なのだと気づいたのです。
橋を渡るとJR神田駅(地図の下端)までわずか5分ほどの距離ですから、橋をそのまま新しいオフィスビルにつなぐことで、より効果を高めようとしたのですね。
それで橋が長くなったわけです。
この橋を作った人たちのねらいがわかってきました。
町と町をつなぐ橋だからこそ、使い勝手だけでなくデザイン的にも優れたものにしたかったのでしょう。
今回は橋の長さから竜閑さくら橋を見てきました。
次回では、竜閑さくら橋に託した思いを、デザインから探っていきたいと思います。
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