戦いに使う扇子 扇子の話⑤  松根屋 その8

扇子は、単に風を送るだけのものではありません。

ときには、戦で使われたり武器になったりもしたのです。

そこで今回は、いわば究極の扇子ともいえる、戦うための扇子について見ていきましょう。

松根屋 目次その1:松根屋とは?その2:創業105周年 その3:素敵な団扇を作ってみよう!その4:扇子ってなに?⦅扇子の話①⦆その5:扇子って何に使うの?⦅扇子の話②⦆その6:扇子はどこで作る?⦅扇子の話③⦆その7:扇子はどうやって作る?⦅扇子の話④⦆その8:戦いに使う扇子⦅扇子の話⑤⦆

「智勇六佳撰 八幡太郎」(歌川国芳、1850 大英博物館)の画像。
【「智勇六佳撰 八幡太郎」歌川国芳、1850 大英博物館】

士気を鼓舞する軍扇

扇子はかつて戦いの中でも使われていました。

その代表例が、軍を指揮するのに使った軍扇(ぐんせん)です。

黒や赤、金などの派手な地に、日の丸などのシンプルな模様を配したものが用いられました。

これは、戦場で目印になるように、目につきやすいデザインを採用したものです。

また、骨は大きめでがっしりとした作りとなっていますので、力強さと豪快さ、それに勢いを感じさせてくれる扇子です。

「熊ヶ谷直実 市川団十郎」(豊原国周(山村鉱次郎、明治20年)国立国会図書館デジタルコレクション)の画像。
【「熊ヶ谷直実 市川団十郎」豊原国周(山村鉱次郎、明治20年)国立国会図書館デジタルコレクション】

軍扇は部隊を指揮できるものだけが持てましたので、逆に持っていることが将であることの証となっていました。

驚くべきことに、20世紀になっても軍扇を使う人がいたほど、日本人の頭の中で戦と扇子が結びついていたのです。

この事実からもわかりますが、軍扇は戦場での目印であるとともに、所有者の権威を示す重要なものであったといえるでしょう。

武将の証・馬印

所有者の権威を示すところから発展したのが、軍の指揮官の目印・馬印(うまじるし)に用いられた扇です。

「名高百勇伝 源頼朝」(歌川国芳 1843~44、大英博物館)の画像。
【「名高百勇伝 源頼朝」歌川国芳 1843~44、大英博物館】

扇の馬印は、金など目立つ色が施されて長い竿の先に着けて周囲からよく見えるように使われました。

たとえば、徳川家康の馬印が金大扇であったことは 歴史ドラマなどでご覧になった方も多いのではないでしょうか。

また馬印に用いる理由として、扇子が末広がりの形状から目出度いものとされたことから武運長久を願う意味合いもあったのです。

ちなみに、扇の馬印は一般の扇よりもかなり大型で、頑丈な骨の上から紙が貼られているので 開閉できない構造でした。

いうなれば、見せるための扇子と言えるでしょう。

遠浪斎重光「源平八島のたたかひに那須の与市宗高 扇のまとを射おとして天下に高名の図」【部分】の画像。
【遠浪斎重光「源平八島のたたかひに那須の与市宗高 扇のまとを射おとして天下に高名の図」【部分】 那須与一が射たのは、軍扇ではなく女官の持つ扇でしたが、よく軍扇に描かれています。】

武器の扇子・鉄扇

さらに変わった使い方として、武器や鍛錬に用いられた鉄製の扇子・鉄扇(てっせん)があげられるでしょう。

鉄扇は、親骨だけが鉄製のものと、骨全体が鉄製のものが現存しています。

これらは共通して、手や手首の鍛錬に使用するために極めて重く作られるのが一般的だったようです。

また、重すぎて扇ぐことが難しいため、開かない構造のものも作られました。

実際に鉄扇を用いたとされているのが、神道無念流の使い手、新選組初代局長の芹沢鴨です。

鉄扇を使うと、舞うように戦うことから戦姿が美しい、とも言われていますが、使いこなすのはとても難しく、鍛錬が欠かせなかったそうです。

「川中嶌百勇将戦之内 明将武田晴信入道信玄」(歌川国芳 1845~46、大英博物館)の画像。
【「川中嶌百勇将戦之内 明将武田晴信入道信玄」歌川国芳 1845~46、大英博物館】

家紋の扇子

戦と深い関係のあった扇子は、家のシンボル〔家紋(かもん)〕にも使われています。

これは、持つ人に権威と武運を運んでくれる扇子が、武士にとって うれしいアイテムだったからなのでしょう。

ゲームの扇子

実は最近、扇子はマンガやゲームで人気のアイテムです。

例を挙げるならば、KOFの不知火舞、ペルソナの雪子、鬼滅の刃の童魔、犬夜叉の神楽など、かなりの数に上っています。

これらのキャラクターは、イケメンあるいは美女であることが多く、しかもかなり癖のある性格、上から目線といった特徴の者が多いように思いますが、これも扇子の持つ優雅さが影響しているのかもしれません。

なお、松根屋(https://matsuneya.jp/)では 軍扇を模した扇子がありますので、みなさんもぜひ一度お立ち寄りください。

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