5月12日は海上保安の日です。
これは昭和23年(1948)に海上保安庁初代長官・大久保武雄の手により、庁舎屋上にはじめてコンパス・マークの庁旗が掲揚されたことにちなんで設けられました。
そこで、知っているようで案外知らない海上保安庁についてみてみましょう。
海上保安庁の誕生
第二次世界大戦前は、日本における海の秩序の維持は、海軍の役割でした。
ところが、昭和20年の敗戦で海軍が解体されると、海の治安が乱れた状態になってしまいます。
不法出入国、密貿易、海賊の横行、密漁などの犯罪が繰り返し行われて、海は混迷状態に陥っていたのです。
日本政府は、この状況を打破して海の治安回復を目指すため、日本を占領していた連合国軍総司令部(GHQ)に相談しました。
その結果、アメリカの海の治安機関、コースト・ガード(沿岸警備隊)から、政府はいろいろとアドバイスを受けながら、海の安全と治安の維持を行う官庁の設置することになったのです。
こうして昭和23年(1948)4月に海上保安庁法を公布、5月1日に運輸省海運総局水路部と灯台局を合併して海上保安庁が設置されました。
海上保安庁開庁
海上保安庁は、その任務が戦前は海軍や逓信省などに分かれていたものを、アメリカのコースト・ガード(沿岸警備隊)をモデルとして、海上保安業務を一元的に担当する機関として設置されました。
そしてこの年の5月12日初代長官・大久保武雄の手により、庁舎屋上にはじめてコンパス・マークの庁旗が掲揚されます。
そこで、海上保安庁では、昭和23年(1948)に5月12日を「開庁記念日」に定めて受け継いでいったのです。
そして平成12年(2000年)からは、「海上保安庁の日」に改称しています。
海上保安庁の役割
海上保安庁は、国家行政組織法および海上保安庁法設置法により、国土交通省の外局として設置されている国の行政機関です。
外局とは、内閣府や省におかれた国の行政機関で、独立性や専門性の高いことから、内閣府や省の内部ではなく外局とされたもので、財務省の国税庁、国土交通省の気象庁などがこれにあたります。
海上保安庁の目的と任務について、難しい専門用語を意訳して、みてみましょう。
目的‥‥海上において、人命と財産の保護し、法律違反の予防・捜査・鎮圧などを行う。
任務‥‥法令を海上で守らせ、沿岸警備、海難救助や海洋汚染の防止、海上における犯罪の予防・捜査・鎮圧、犯人の逮捕、船舶交通の規制、水路・灯台の設置・維持管理、そのほか海上安全の確保についての業務を行う。
海上保安庁の仕組み
海上保安庁は、総務部のほかに主に4つの内部組織を持っています。
船舶技術部‥‥警備救難用船艇、ヘリコプターなどの配備を主に担当する。
警備救難部‥‥沿岸警備・海難救助・遭難船舶の処理、海洋汚染防止などを担当する。
海洋情報部‥‥水路の測量や水路図・航路図などを作成供給する。
交通部‥‥灯台や航路標識の建設・保守・運搬などを担当する。
また、出先機関として、全国沿岸水域を11の海上保安区に分けて、管区ごとに管区海上保安本部、海上保安部、海上保安署を置いています。
そのほかにも、職員の訓練・養成機関として、広島県呉市に海上保安大学校、京都府舞鶴市に海上保安学校がありますが、漫画・映画『海猿』で出てきたのを覚えておられる方もおられるかもしれません。
海上保安庁の職員
いっぽう、海上保安庁の所管する業務を行うために、海上保安官および海上保安官補が置かれています。
海上保安官は、人および船舶に対して必要な命令・立ち入り検査・質問・強制処分など行う権限を持ち、武器の携行も許されているのです。
海上保安庁の職員は、2021年7月1日現在で男性は12,118人、女性は1,165人、全部で13,283人です。
いっぽう、定員は国土交通省定員規定により14,538人と定められています。
このうち、海難救助や犯罪捜査などの警備救難業務に直接従事する職員が多数を占めているようです。
ちなみに、海上保安庁Webサイトによると、令和4年4月1日時点で、保有船舶数474隻、保有航空機90機となっています。
海上保安庁の活躍
海上保安庁は、現在に至るまで、さまざまな場面で活躍してきました。
具体例を挙げると、平成7年(1995)阪神淡路大震災、平成23年(2011)東日本大震災での緊急輸送や災害応急活動や昭和61年(1986)伊豆大島の三原山噴火に際の全島避難など、災害時の活動が記憶に残るところです。
また、平成14年(2002)九州南西海域での北朝鮮工作船銃撃事件、平成22年(2010)尖閣諸島における中国漁船衝突事件など、領海侵犯取り締まりや沿岸警備に奮闘する姿も忘れられません。
日本の海を取り巻く環境が厳しさを増す中、海上保安庁の奮闘には心から感謝をささげたいと思います。
(この文章では、敬称を略させていただきました。また、『海上保安庁 巡視船の活動』交通ブックス201、邊見正和(成山堂書店、1993)、『闘う!海上保安庁』岩尾克治(光人社、2010)、海上保安庁Webサイトおよび『国史大辞典』『日本史大事典』の関連項目を参考に執筆しています。)
きのう(5月11日)
明日(5月13日)
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