私は主夫で、いつも家事と育児に翻弄されています。
そのわずかな隙間を見つけて橋を見ることがなによりの楽しみ。
橋を見る、といっても橋梁工学はチンプンカンプン、ただ橋を見て満足しているだけの橋マニアなのです。
みなさんには何事かに思い惑うときに、天啓とでもいうのが降ってくる、そんな経験はないでしょうか?今回は昌平橋を巡る、そんな話です。
うちの上の娘が生まれるときの話なので、もう10年以上前の話です。
妻は陣痛が始まり深夜に駿河台にある病院に入院、私も朝から病院に駆け付けました。
分娩控室で唸っている妻を励ましたりマッサージしたり、他の妊婦たちの叫び声や、新しい命の雄叫びが響く中で、日が暮れるまで過ごすことになったものの、出産は明日に日延。
もちろん妻はくたびれ果ててぐったりしていたのですが、横にいた私もくたくたです。
帰り道、重い足を引きずる私は、なぜだか電車に乗る気も起こらず、駿河台から坂道をトボトボと下って行ったのでした。
もう歩くのも嫌になったとき、線路の土手の切れ間から、突然一本の橋が目に飛び込んできたのです。
その橋は、黄昏時の穏やかな空気をまとって、ここで少し休んで行きなよ、と声をかけてくれているかのよう、その言葉に甘えて ここで一休みすることに。
私のようなハンパな人間が父親としてやっていけるのか?
そもそも父親とは何か?
子供が生まれてくる前に、答えのない問いに不安は募るばかりです。
心が少しほっこりしたところで、改めてこの橋を眺めてみました。
夕闇の迫る橋の上には、ライトを点けたバスやトラックが次次と通り過ぎて、脇の小さな橋には家路につくサラリーマンたちが足早に通り過ぎる様子、頭上高く轟音を立てながら、しきりに電車が通っていきます。
こうしてしばらく橋を見ていた私は、ある事実に気付いて驚愕したのです。
なんと、一本に見えたこの橋、実は三本の橋が合わさって一つの橋!
なので、橋の高欄も橋三本分で合わせて6列!
どうしてこんなことになったのか・・・、毛利の三本の矢の教え?
この橋の名前は昌平橋、長さ22.86m、幅31.10mの神田川に架かる橋です。
次回からは、三本で一本というこの不思議な橋についてみていきましょう。
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