地下鉄が地上を走る、しかも鉄橋を渡るってちょっと変ですよね。
実は、そんな光景を、東京のど真ん中で見ることができるのです。
今回はそんな地下鉄丸ノ内線神田川橋梁のお話しです。
私が初めて自分と同類の橋マニアに出会ったのは、以前勤めていた会社でした。
同僚のR君、彼がゆうきまさみ作『究極超人R』の主人公R田中一郎に似ているからそう呼んでいたのですが、その彼は無類のゲーマーにして鉄オタ、そして橋マニアにして歴史地理のスペシャリスト。
トレードマークのメガネと丁寧な物腰で、先輩たちから愛されるキャラの人でした。
あれは確か、私がうっかり滋賀県にある高時川の寿橋を褒めてしまったのがきっかけだったと思います。
職場の仲間がドン引きだった中で、R君だけが強く頷いてくれました。
不思議なことに、鉄道オタクの多い職場でしたが、橋マニアには奇異の目が注がれたのです。
その後、R君と改めて橋談議する機会があり、R君の方から、まずはお近づきに近代日本を代表する美麗な橋・聖橋から話をはじめる提案をされたのです。
彼のおススメは御茶ノ水橋からの眺めです。
これは季節や時間を問わず絵になる情景で、マニアでなくとも人気のスポットで、私も新緑の季節のこの眺めが大好きでした。(ただし今は御茶ノ水駅の大改修工事でちょっと見えにくいです。)
なるほど、と語り合った後から、私があげたのが東京地下鉄・丸の内線の神田川橋梁から見た眺めでした。
この答えにR君は悶絶、スイッチが入ってしまい、1時間にわたって熱く語り続けることになります。
ここで、私と神田川橋梁との出会いについて語らなければなりません。
半世紀近く前、私が中学二年生の夏休みに初めて上京した時のこと、二泊三日の旅程の3日目でした。
この日は東京で単身赴任していた父の下宿のあった荻窪を出発、国会議事堂、東京タワーを経由して高輪泉岳寺を目指す計画を立てました。
新宿の雑踏を避けた方が良いとの父の助言で、御茶ノ水で国鉄から地下鉄丸ノ内線に乗り換えて国会議事堂を目指すことにしたのです。
初めての東京という心細さもあって、かなり緊張気味の私。
乗り込んだ地下鉄は人もまばらで、遠慮がちにドア近くのシートに腰掛けました。
電車が動き出してしばらくした時のことです。
真っ暗だった窓の外が突然、光に包まれて、夏の日差しに輝く白亜の橋が目に飛び込んできたのです!
ゴトゴトと音を響かせる中、深い緑を背景に、その橋は輝くような気高い美しさをまとっていました。
その時私は、驚きのあまり立ち上がり驚きの声を上げてしまったのです。
しばらくして周りから突き刺さるような視線にようやく気付いた私は、その場から逃げ出したいほど恥ずかしく、できる限り小さくなってやりすごしたのでした。
そして一瞬にして地下鉄は再びの暗闇の中に戻ります。
今見た光景は、幻か?
地下鉄に鉄橋、当時の私には全く想像すらしなかった光景にただただ呆然としたのでした。
今でもこの記憶は気恥ずかしさとともに私の脳裏に焼き付いています。
地下鉄なのに橋があるのは、確かにちょっと不思議な光景です。
そこで次回からはこの橋の謎を解き明かしていきましょう。
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