日本文化と畳の深いつながり
日本文化の「おもてなしの心」が世界的に注目されてるのを耳にしたことはありませんか?
しかし、日本流おもてなしが広く知られる一方で、その基になっている有職故実(ゆうそく こじつ)についてはあまり知られていません。
有職故実とは、「朝廷や武家の礼式・典故・法令などに関する古来の決まり」【広辞苑 第6版】、簡単に言うと、貴族や武家の儀礼や行事といったTPOに合った作法をまとめたものなのです。
この有職故実とは、わが国の宮中、さらには武家で、千年にわたって磨き抜かれた礼儀作法で、奥ゆかしく、すべてのことに配慮が行き届いた人になることを目指しています。
じつは、その有職故実に欠かせないアイテムが畳なのです。
ですので、TPOに合わせて様々なタイプの畳が作り出されてきました。
そこで今回は、我が町が誇る畳の匠・金井功さんがこれまでに作ってきた有職畳や特別な畳の数々を見ていきたいと思います。
御神座(ごしんざ)
厚畳(あつじょう)の上に八重畳(やえだたみ)、龍鬢(りゅうびん)、お茵(しとね)と重ねて作る畳です。
その名の通り、神様だけが鎮座される畳で、この上にご神体が安置されます。
八重畳(やえだたみ)
八重畳とは、神社において神様だけが使われる畳です。前述の御神座の中段に置かれます。
上段のゴザと、土台になる下段の間にゴザを6枚重ねて作るのですが、それらのゴザの縁に繧繝縁を模様を少しづつずらせながら側面に表れる模様が一体に見えるように仕上げて、最終的に土台を含む八段重ねを表現しているのです。
茵(しとね)
綿入りの畳で、畳表(ござ)を5枚重ね、鏡と呼ばれる中央部分には、綿を乗せ白地の大和綿を被せてあります。額縁の四方には赤地の大和錦の中に綿を入れて作られた畳です。
ちなみに このお茵は、現在の座布団の原形となったものです。
四天付拝敷(してんつき はいしき)
礼拝の座具となる敷物で、禅寺で使います。四天とは四天王のことで、東西南北の四方を守護する四神をあらわしています。
礼盤(らいばん)
畳床に板を縫い付けて締め、柱を立てて畳の芯材を制作しています。厚みも含めた寸法が決まっています。
下から立ち上がるヘリと、上面四方縁の上敷きの側面で繧繝縁の文様が重なります。
このうち、ヘリを大紋高麗縁という大ぶりの円形の文様をはいした縁で仕上げたのが大紋高麗縁礼盤です。
これは、導師が着座して礼拝読経する仏前の高座になります。
厚畳(あつじょう)
お寺や神社で礼拝の時に使用する畳です。厚みは通常の畳2枚分で、周囲四方に縁が付けられています。
四方縁 拝敷(はいしき)
寺院での礼拝の時に使います。
軾(ひざつぎ)
神社での礼拝の時に使います。
円形畳
畳は四角いものと思われがちですが、五角や六角、八角などさまざまな形の畳が作られてきました。
なかでも側面がすべて曲面になっている円形畳は、縁を紋様くずれやシワなく仕上げるには高度な技術が必要です。
私は、畳職人がこの畳の仕上がり具合で、自分以外の職人の腕前を判断するという話を耳にしたことがあります。
ミニ畳
金井さんは、この他にも伝統ある寺院や神社の畳を数多く手掛けて来られました。
そして、この技術を応用して雛畳などのミニ畳も手掛けておられます。
ここまで見たように、明治44年(1911)創業の金井畳店、四代目の金井功さんは、日本の伝統文化と伝統の技を守って畳作りに取り組まれています。
みなさんもぜひ、地域の隠れた名店、金井畳店(東京都台東区浅草橋2‐13‐9)〔http://www.tatamiya-kanai.com/〕(https://www.facebook.com/tatamiya-kanai/)
でぜひ、畳の匠の技をご覧ください。
【目次】その1:日本文化と畳 / その2:畳のすばらしさとは? / その3:伝統の技に挑む / その4:伝統の技-八重畳編― / その5:伝統の技を伝えるのはなぜ? / その6:日本の伝統を明日につなぐ
この町には素晴らしいものを作る方、最上の技術を持つ方が多くいらっしゃいます。
例えば、和菓子や豆菓子、佃煮、畳、団扇や茶筒、革製品、革靴、クルミボタン、シャツ、写真、日本刀研磨などなどです。
鳥蔵柳浅では、町の匠たちを応援しています。
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